ご挨拶
2014年1月6日
あけましておめでとうございます。
いやな時代を予感させる「特定秘密保護法」成立や安倍首相の靖国神社参拝など、喧噪のうちに2013年は去り、波乱含みの2014年が明けました。めでたさも中ぐらい、の新春気分です。
100年前の1914年は、第一次世界大戦勃発の年です。戦車や毒ガスから、やがては原子爆弾まで先端技術が駆使されることになる戦争の世紀の始まりでした。広島・長崎の被爆とともに太平洋戦争を終えた日本は、憲法で戦争の放棄を誓ったはずでした。だが昨今、戦争に出て行ける「ふつうの国」になろうという動きがあらわになっていることに危惧を覚えます。
軍事だけではなく、科学・技術は環境、災害、病気など、社会経済のあらゆる問題に深く関わっています。今こそ、世代を超え、専門分野を超えた対話を深めることが必要ではないでしょうか。大学の同窓会の役割のひとつは、そんなところにもあると思います。
「東大科哲の会」は1998年秋に誕生しました。設立総会での挨拶で、村田純一さん(当時、科学史・科学哲学分科主任)は「この会には現場で実際にハードなサイエンスに携わっている方もいれば、ジャーナリストとして活躍されている方、企業で研究者として活躍されている方、色々な方がいるわけで、そういう方々から現在の科学あるいは技術を一体どう考えたらいいのかということを、生の声として聞くことができるわけで、大変貴重な機会になるのではないかと思っています」と、会の意義を述べています。
この使命は今も引き継がれています。教養学部の基礎科学科「科学史・科学哲学」分科が学際科学科「科学技術論」コースに再編されたことで、さらに交流の輪が広がり、社会とのからみが深まることが期待されます。
会員交流の一環に、1999年創刊の会誌『科哲』があります。2014年元日付で15号を発行しました。比類のないこの種の同窓会誌が15年も続いているのは誇ってもいいでしょう。上野紘機、辻中裕子両理事が編集にあたった15号では「科学技術と政治」を特集しました。薬師寺泰蔵さん(1970年卒)の総会記念講演「政策駆動型科学技術」を収録、鈴木邦彦さん(1955年卒)、金子務さん(1957年卒)、丸山瑛一さん(1957年卒)の寄稿を掲載しています。
16号の特集テーマについて、ご提案やご意見を寄せてください。たとえば「科学技術と秘密」などは、いかがでしょうか。引き続き、シニア会員のご支援はもとより、若い方のご寄稿も期待しています。
今年の第15回総会は4月5日(土)に教養学部(駒場)交流ラウンジで開催、大熊由紀子さん(1963年卒)が「科学と福祉の間には」と題して記念講演します。
午の年。当方は馬齢を重ねるばかりですが、それに甘んじず、知的好奇心をもって駆け回りたいと思います。「唇寒し」の世にならないように。
代表理事 武部 俊一