ご挨拶

あけましておめでとうございます。今年の干支は「丙申」。60年前の丙申は、「もはや戦後ではない」の記述で記憶に残る経済白書が出た年でした。日本の国連加盟が認められる一方で、ソ連がハンガリーの反乱を戦車で制圧して東西冷戦が深まる激動の年でもありました。
3月で東日本大震災から早や5年となりますが、「もはや震災後ではない」と言える状況ではありません。東北の津波被災地や福島の原発災害地にとって、おめでたい春はまだ遠いようです。

年表をひもときますと、1956年には国際科学史・科学基礎論連合が設立されています。47年設立の国際科学史学会と49年設立の国際科学哲学会が合体したようです。東京大学教養学部教養学科に科学史・科学哲学分科が新設され、第1回卒業生が巣立ったのは1953年でした。その同窓会「東大科哲の会」は1998年に誕生、社会の様々な分野で活躍する会員の交流の場となっています。
教養学部の基礎科学科「科学史・科学哲学」は学際科学科「科学技術論」コースに再編され、さらに交流の輪が広がり、社会とのからみが深まることが期待されます。現代社会の中で科学・技術をどう考えたらいいか。国境を越え、世代を超え、専門分野を超えた対話がますます必要になっています。そこに大学の使命があり、同窓会の役割もあると思います。

1999年創刊の会誌『科哲』は、2016年元日付で17号を発行しました。上野紘機、辻中裕子両理事が編集にあたり、「時間」のテーマで特集を組みました。野家啓一さんの総会記念講演録「大森時間論の再検討」をはじめ、植村恒一郎さんの「時間の流れと時計」、小倉勝男さんの「天文学的に見た時間」、金子務さんの「賢治の刹那滅からモナド的時間を思う」の論稿を載せています。

今年の第17回総会は4月2日(土)に駒場キャンパスの交流ラウンジで午前11時から開催。中村征樹・大阪大学全学教育推進機構准教授が「研究不正問題をめぐって」と題して記念講演します。会員以外の方々の参加も歓迎します。
申年ですが、しっかり目を見ひらき、耳をかたむけ、大いにものを言いましょう。「もはや平和ではない」時代にならないように。

代表理事 武部 俊一