東京大学科学史・科学哲学研究室 東京大学科学史・科学哲学研究室
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1,2年生の方へ

講義名 倫理学入門
年度 2009
区分 夏学期:通常講義
担当 今井 知正
教室 未定
詳細

授業の目標、概要
倫理とは、通常、「ある社会で一般に承認されている規範の総体」として理解されている。この理解によれば、倫理とは社会的な行為規範・規則・決まり・やり方というものにほかならない。しかし、西洋語の「倫理」(エーティカ)とは、元来、「人間の「性格」や「人柄」(エートス)に関すること」を意味しており、したがって倫理学とは「人間の「性格」や「人柄」に関する学」として理解されていた。つまり、倫理学とは「人間論」ないし「人間学」にほかならなかったのである。本講義では、倫理についてのこの基本の理解に立って、「「人柄」に関する学」としての倫理学がどのように展開され、何をめざしていたのか、またこれが現代においていかなる意味をもち、いかなる問題を提起しているのかという点について考えてみたい。
 

 授業のキーワード
人柄、徳(よさ)、善(よい)、幸福、徳倫理学、共同体主義

授業計画
 前半と中半は古代ギリシアにおける倫理学の展開を、プラトンの『国家』やアリストテレスの『ニコマコス倫理学』などによりながら、具体的に見ていく。その際、主題となることは、人柄のよさとしての徳や善、さらに幸福という基本概念がどのように捉えられ、定義されているのかという点である。
    後半はこのような展開の現代的な意味を、たとえば、マッキンタイアの『美徳なき時代』を取り上げながら、見ていく。「徳倫理学」とそれに基づいた「共同体主義」の主張が20世紀終半においてどのように捉えられ、論じられたかということが焦点の一つとなる。

授業の方法
基本的に毎週プリントを用意し、必要ならば、訳書のコピーを配布しながら、進めていく。

成績評価方法
  学期末試験またはレポート

教科書
教科書は使用しない。

参考書
    書名    :国家(上)(下)
    著者(訳者):プラトン(藤澤令夫訳)
    出版社   :岩波書店

    書名    :ニコマコス倫理学(上)(下)
    著者(訳者):アリストテレス(高田三郎訳)
    出版社   :岩波書店

    書名    :美徳なき時代
    著者(訳者):A.マッキンタイア(篠崎榮訳)
    出版社   :みすず書房

履修上の注意
わたしにとって、倫理学は、若いときには、とてもむずかしく、正直なところ、あまり興味を惹くものではなかった。そのようなことを繰り返さないためにも、質問を大いに歓迎する(授業時も可)。

学習上のアドバイス
参考書として挙げたプラトンの『国家』やアリストテレスの『ニコマコス倫理学』は、授業とは関わりなく、一度、読破することを勧める。