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刊行物

『科学史・科学哲学』No.19
タイトル: 『科学史・科学哲学』No.19
刊行年:2005
著者情報:薩日娜、馮立昇、金凡性、宝鎖、金山浩司、小山俊士、串田純一、小山俊士
出版社:東京大学 科学史・科学哲学研究室

目次:

一般論文

  • 「東京数学会社により考察する明治初期数学の特徴」薩日娜
  • 「周達と日中近代数学交流」馮立昇
  • 「科学研究における地域性と自立性――日本地震学の土着化過程を中心に」金凡性
  • 「中国における火薬と火砲の発明について」宝鎖
  • 「一歩後退、二歩前進――前期スターリン時代ソ連における物理学理論をめぐる哲学論争においてセルゲイ・ヴァヴィーロフがとった戦術について」金山浩司
  • 「フォン・ノイマン「EDVAC草稿」について」小山俊士 
  • 「根本気分としての深い退屈とその語り」串田純一



フォン・ノイマン「EDVAC草稿」について小山俊士)
ジョン・フォン・ノイマン(John von Neumann 1903-1957)の「EDVACに関する報告第一草稿」の内容を分析した。ENIACを開発していたペンシルバニア大学ムーア・スクールでの議論の整理として執筆されたこの草稿は、「プログラム内蔵」の概念を初めて公にし、現代のコンピュータの基本的な構成である「ノイマン型アーキテクチュア」を世界に広めた文書とされる。しかしその内容は、後に実際に作られるようになったプログラム内蔵コンピュータとは大きく異なるものであった。今日のコンピュータ像からは切り離し、この当時、フォン・ノイマンがコンピュータをどのようなものと理解していたかとを考察した。
筆者が特に強調したのは、「装置を簡略化する」ことを強調していた点である。それは、フォン・ノイマン自身が抱えていた課題と、装置の技術的な困難とに対応して採用した解決策であって、そのアイディア秘められたより大きな可能性に気付き、それを生かす修正を重ねていくのは、後のことであった。