廣野 喜幸 ひろの よしゆき |
■研究内容
進化生態学:ゴキブリからシロアリへどのように社会が進化していったか。もう25年も前の仕事になりました。三浦徹さん(東京大学大学院理学系研究科教授)、前川清人さん(富山大学理学部准教授)、小口晃平さん(産業技術総合研究所)をはじめとする後輩のみなさんが、ありがたいことにだいぶ研究を進めてくれました。あいかわらず、興味だけは持ち続けています。
生物学史:博物学史および恐竜学史・昆虫学史の論文を書こうと思っていますが、停滞中です。
生命倫理学:生権力論。フーコーはもとより、アガンベンとエスポジト、さらにはローズやラジャンを踏まえた展開ができるといいのですが。
科学技術社会論:科学的助言論と科学倫理に対してシステム論的・ゲーム理論的にアプローチできないものかと思案中です。
科学技術コミュニケーション論:これまでの専門家ー市民といった大味な枠組みではなく、市民の構造にも分け入った科学技術コミュニケーションにチャレンジ中です。新型コロナ禍で科学技術クライシス・コミュニケーションが立ち後れていることを痛感しました。何とかしたいものです。
生命論:生きているって何だろう。魂って何だろう。このあたりを金森修さんともっと話しておきたかった、おくべきでした。
■主要業績
1 Theses
- 廣野喜幸(1983)『現代生物学思想の諸相−−動物の心的現象をめぐる若干の考察』東京大学教養学部教養学科(科学史・科学哲学分科)提出卒業論文
- 廣野喜幸(1985)『オオシロアリHodotermopsis japonica Holmgrenの生殖カストの発現様式についての研究』東京大学大学院理学系研究科(相関理化学専攻)提出修士論文
- Yoshiyuki HIRONO (1990) Histological and ecological studies on the caste differentiation of the Japanese dampwood termite Hodotermopsis japonica (Termopsidae: Isoptera) (1990)東京大学大学院理学系研究科(相関理化学専攻)提出博士論文
2 Papers & Reviews
- Tadao MATSUMOTO and Yoshiyuki HIRONO (1985) On the caste composition of a primitive termite Hodotermopsis japonicus Holmgren (Isoptera, Termopsidae) (1985)Scientific Papers of the College of Arts and Sciences, The University of Tokyo 35(2): 211-216
- 松本忠夫・王家駟・廣野喜幸(1990)「日本および中国のオオシロアリ属(Hodotermopsis)に関する最近の研究−−地理的分布を中心として」『しろあり』80:3−12
- 廣野喜幸・松本忠夫(1990)「シロアリの階級分化:なぜわれわれはオオシロアリを研究しているか」『しろあり』 82:3−12
- Kimihiro OGINO, Yoshiyuki HIRONO, Tadao MATSUMOTO and Hajime ISHIKAWA (1993) Juvenile hormone analogue, S-31183, causes a high level induction of presoldier differentiation in the Japanese damp-wood termite, Zoological Science 10: 361-366
- 廣野喜幸(1993)「円環をなす蟻−−オートポイエーシス論からみた協同現象」『現代思想』 21(10): 196-212
- Shun'ichiro NAOMI and Yoshiyuki HIRONO (1996) A New Genus and Species of a Termitophilous Staphylinidae (Coleoptera) Assocoated with Hodotermopsis japonica (Isoptera: Termopsidae) from Taiwan, Sociobiology 28(1): 83-89
- 廣野喜幸(1996)「生命至上主義の帰趨」『イマーゴ』7(10): 186-201
- 廣野喜幸(1997)「痛みから見た安楽死・尊厳死の問題」『メンタルケア』 2: 166-175
- 廣野喜幸(1998)「意味・苦境・転機としての病−−ヴィクトーア・フォン・ヴァイツゼッカーの病い観」『思想』885:48-71
- 堂前雅史・廣野喜幸(1998)「クローン人間と"ヒトラー"の遺伝子」『現代思想』26(11): 74-89
- Noriaki MATSUMURA, Yoshiyuki HIRONO and Yoko MATSUBARA (1998) Fujikawa Yu, Pioneer of the History of Medicine in Japan, Historia Scientiarum, 8(2): 157-171
- 堂前雅史・清野聡子・廣野喜幸(1999)「生態工学は河川を救えるか−−科学/技術と社会の新たな関係を求めて」『科学』69(3):38-58
- Miura T, Hirono Y, Machida M, Kitade O, Matsumoto T (2000) Caste developmental system of the Japanese damp-wood termite Hodotermopsis japonica (Isoptera: Termopsidae). Ecological Research 15: 83-92
- 廣野喜幸(2000)「進化学」『現代思想』28(3): 166-169
- 廣野喜幸(2001)「進化心理学の科学論的検討に向けて」『生物学史研究』 67:67ー75
- 廣野喜幸(2001)「バイオテクノロジーの技術論的位相」『思想』926:121-144
- 堂前雅史・廣野喜幸・小幡豊・佐藤八十八(2001)「現代日本の生物観・生命観の構造−−大学生を対象とした生物名の自由想起法、助成想起法による調査報告」『動物観研究』6: 3-10
- 廣野喜幸(2001)「ヒト・ゲノム計画」『生物学史研究』68:64ー67。
- 廣野喜幸(2001)「死の生命科学の現在」『和光大学人間関係学部紀要』 6:14-29
- 廣野喜幸(2002)「科学論とリスク論の彼方へ−−科学論とリスク論が交錯する地平の可能性をめぐる断章」『情況』3(1): 28−41。
- 廣野喜幸(2002)「薬・市場・いのち」『アソシエ』9: 156-168。
- 廣野喜幸(2002)「薬価制度改善の焦点」『東京保険医新聞』1218(2002年 10月5日),1219(2002年11月5日)
- 廣野喜幸(2002)「遺伝子技術」『科学技術社会論研究』1:178-184。
- 廣野喜幸(2002)「科学者の社会的責任論」『湘南科学史懇話会通信』8: 40-53
- 廣野喜幸(2003)「バイオの50年・科学批判の半世紀」『蛋白質核酸酵素』 48(5): 611-3
- 廣野喜幸(2003)「遺伝子組換え食品が売れない理由」『人間会議』 9:224-227
- 廣野喜幸(2004)「[BSE]歴史的経緯」『科学』75(1): 56-59
- 田中智彦・廣野喜幸(2007)「生命科学の歴史的現在−渡辺格氏の謦咳に接して」『科学』77(3): 326-330
- 廣野喜幸(2007)「科学史・科学哲学の問題としての科学コミュニケーション」『科学史・科学哲学』20: 1-12
- 田野尻哲郎・廣野喜幸(2010)「脳神経倫理学の語られ方を問い直す--委員会分析による脳神経倫理学の現状評価」『哲学・科学史論叢』12:1-26。
- 廣野喜幸(2010)「超システム論再考-多田生命論の意味論」『現代思想』38(9): 172-19。
- 廣野喜幸(2011)「ヒトゲノム計画の国際事業化」『科学史研究』50:221-223。
- 廣野喜幸(2016)「古代ギリシャにおける二つの生命概念、ゾーエーとビオスの分析」『ギリシャ哲学セミナー』13: 14-32。
- 定松淳・花岡龍毅・田野尻哲郎・田中丹史・江間有沙・廣野喜幸(2017)「薬剤師を活用した医薬品リスクコミュニケーションの可能性の探索」『科学技術コミュニケーション』21:3-15(査読付)
- 廣野喜幸(2017)「水銀リスク認知の歴史的分析-日本における有機水銀中毒と水俣病に焦点をあわせて」『哲学・科学史論叢』9:1-38。
- 廣野喜幸(2018)「カミナリ竜はいかにして「上陸」したかー半水性生活説から陸上生活説への転換に関する科学史的分析」『哲学・科学史論叢』20:1-31.
- 廣野喜幸(2019)「人体の商品化と生権力」『日本科学技術社会論学会』17:18-36.
3 書籍
- 廣野喜幸・市野川容孝・林真理編著『生命科学の近現代史』勁草書房、 2002年
- 廣野喜幸(2002)「公共の場での問題解決:吉野川第十堰可動堰化問題」、小林傳司編『公共のための科学技術』玉川大学出版会、140−157頁
- 廣野喜幸(2003)「生命科学・バイオテクノロジー100年間の推移と未来展望」、渡邊格ほか『21世紀生命科学バイオテクノロジー最前線』東京教育情報センター、303−339頁
- 廣野喜幸(2003)「ヒトゲノム計画が私たちの社会にとってもつ意味を何だろうか」、東京大学綜合研究会編『ゲノム』東京大学出版会、29-56頁
- 廣野喜幸(2005)「環境「問題」の現在」、東京大学環境三四郎「環境の世紀」編集プロジェクト編著『エコブームを問う−東大生と学ぶ環境学』学芸出版、1-28頁
- 廣野喜幸(2005)「薬害エイズ問題の科学技術社会論的分析に向けて」、藤垣裕子編『科学技術社会論の技法』東京大学出版会、75-99頁
- 藤垣裕子・廣野喜幸編(2008)『科学コミュニケーション論』東京大学出版会
- 原塑・廣野喜幸(2009)「脳科学と社会-脳科学リテラシーの観点から」、石浦章一・黒田玲子・山科直子編著『東大社会人科学講座 生命科学編 脳と心はどこまで科学でわかるか』南山堂、43-71頁。
- 廣野喜幸(2010)「医の倫理から生命倫理への転回」、小松美彦・香川知晶編著『メタバイオエシックスの構築へ-生命倫理を問いなおす』NTT出版、137-161頁
- 廣野喜幸(2012)「あなたの心が知りたくて-心の進化の謎」、石浦章一監修『東大オープンキャンパス発 生命科学の未解決問題』西村書店、148-174頁。
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廣野喜幸(2013)『サイエンティフィック・リテラシーー-科学技術リスクを考える』丸善出版
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廣野喜幸(2014)「日本の生権力システム」、小松美彦・香川知晶編著『生命倫理学の源流-戦後日本社会とバイオエシックス』岩波書店、13-45頁。
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Hirono, Yoshiyuki (2015) AIDS Patients Due to Transfusion of HIV Infected, Non-heat-treated Blood Products. In: Fujigaki, Yuko (ed.) Lessons From Fukushima: Japanese Case Studies on Science, Technology and Society, pp. 195-218.
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廣野喜幸(2017)「食品の安全性と水銀中毒-生活習慣と行政基準」、橋本毅彦編著『安全基準はどのようにできたか』東京大学出版会、170-208頁。
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廣野喜幸(2020)「生命倫理」、藤垣裕子[編]『科学技術社会論の挑戦2――科学技術と社会』東京大学出版会、190-210頁。
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廣野喜幸(2021)「科学者の社会的責任―専門知の失敗と責任システム」、金子務・酒井邦嘉[監修]・日本科学協会[編]『科学と倫理―AI時代に問われる探究と責任』中央公論新社、53-74頁。
4 翻訳
- ハインド 『エソロジー 動物行動学の本質と関連領域』(1989)紀伊国屋書店(木村武二氏他5氏と共訳)
- アイゲン & シュスター 「ハイパーサイクル」(抄訳)(1992)『現代思想』 20(10):160-167。
- マクファーランド編 『オックスフォード動物行動学事典』(1993)どうぶつ社(木村武二氏他11氏と共訳)
- グールド 『がんばれカミナリ竜』(1995) 早川書房(松本文雄・石橋百枝両氏と共訳)
- グリマルディ 「琥珀に閉じこめられた虫たち」(1996) 『日経サイエンス』(1996年6月号) 26(6):80-88。
- コンラッド 「哲学的相対性原理」(1996) 『現代思想』 24(11): 276-291(竹内薫氏と共訳)
- キュッパース 「生物情報の文脈依存性」(1997) 『現代思想』 25(10):278-289
- ウィルソン『生物の神秘生活』(1999)徳間書店(小幡豊・小板橋浩之・竹内薫・宮島昭二・李孝徳各氏との共訳)
- ヴァレラ「生物学的自律性の諸原理 第1部」(2001)『現代思想』 29(2):62-117(染谷昌義氏と共訳)
- 『ケイン生物学』(2004)東京化学同人(石川統監訳、塩川光一郎・堂前雅史・三浦徹各氏と共訳)
- 『科学博物館』(2005)朝倉書店(橋本毅彦・梶雅範・廣野喜幸監訳)
- 「ダム」、「農業主義」 『科学・技術・倫理百科事典』(2012)丸善
- ジョン・ウォラー『サイエンス超簡潔講座 遺伝』(2021)廣野喜幸 (監修)・亀濱香 (翻訳) 、ニュートンプレス。