東京大学科学史・科学哲学研究室 東京大学科学史・科学哲学研究室
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講義名 科学哲学Ⅰ
年度 2014
区分 夏学期:集中講義
時間 2014/7/16~18 (9:00~18:00)
担当 河野 哲也
教室 8号館205教室
詳細

講義題目: 
フェミニスト的な現象学的身体と心の哲学

授業の目標・概要:  
従来の現象学的身体論、さらには心の哲学や認知科学におけるエンボディメント(身体性)の議論は、暗黙のうちに、健康で異性愛者の知的な成人男性の身体をモデルとしてきた。この暗黙の偏向によって、女性の身体、障害や疾病のある身体、加齢した身体、子どもの身体は、考察の対象から外されてきた。フェミニスト現象学は、従来の女性の身体をめぐる二つの対立した見方(本質主義と構築主義)批判的に検討しながら、女性の身体において自然と社会とが邂逅し、ときに融和し、ときにせめぎ合う経験を具体的に記述することで身体論の新しい展開を試みている。本講義では、フェミニストの観点を導入した身体の現象学と心の哲学を紹介し、さらなる展開を探ることにする。

授業のキーワード:  
[日本語用]

現象学、心の哲学、フェミニズム、ジェンダー、身体

[外国語用]


授業計画:  
1.イントロダクション:授業の目的と方法
2.なぜ現象学と心の哲学にフェミニズムが必要か?
3.T.Moi. 女性とは何か 
4.M. Sheets-Johnstone 身体論的転回
5.E. Grosz 書き込める肌、性的差異
6.E. Grosz 身体の延長としての都市
7.A.M. Young 「女の子投げ」の作られ方
8.T.J. Cordas 身体性と文化の現象学
9.G. Weiss ボディ・イメージと間身体性
10.S.L. Bartky 女性的意識の現象学:抑圧と恥
11.S. Wendell, 稲原美苗 障害についてのフェミニズム的反省
12.S. Heinaemaa 性的差異の現象学
13.L. Kaell 加齢と痛みの現象学
14.見られることの現象学
15.まとめ:現象学と心の哲学のフェミニズム的転回

授業の方法:  
演習形式の授業をします。テキストを事前に読んできてもらい、ディスカッションで進み、教師の側からの一方的な講義はしません。こちらでまとめたテキストを準備しますので、事前に読んできてください。

成績評価方法:  
予習レポート50%、授業内提出物(リアクションペイパーなど)25%、ディスカッションへの参加25%とします。

教科書: 
1)Sheets-Johnstone,M.(2009). The Corporeal Turn. Imprint Academic Com. 
2)Moi, T. (1999). What Is a Woman?: And Other Essays. Oxford U.P.
3)Grosz, E. (1994). Volatile Body. Indiana U.P.
4)Grosz, E. (2008). Chaos, Territory, Art. Columbia U.P.
5)Young, A.M. (2005). On Female Body Experience: Throwing Like a Girl and Other Essays. Oxford U.P.
6)Weiss, G. & Haber, H.F. (1999). Perspective of Embodiement. Routlegde.
7)Bartky, S.L. (1990). Femininity and Domination. Routledge.
8)Weldell, S. (1996). The rejectd body. Routledge.
8)Inahara, M. (2009). Abject Love. VDM Verlag Dr. Mueller.
9)Heinsmaa, S. (2003). Toward a Phenomenology of Sexual Difference. Rowman Littlefield Pub Inc.
10)Kaell,L. (ed.) (2013).Dimetions of Pain. Routledge.

参考書: 


履修上の注意: 
ディスカッション中心の集中講義であるために、事前のテキストの講読が必要とされます。テキストはこちらで編集したテキストを準備しておきますので、14号館の科学史科学哲学事務室にて夏学期のできるだけ早い時期に受け取っておくこと(4月から入手可能)。テキストには事前課題をつけてありますので、それを授業の最初の回に提出してもらいます(予習レポート)。

関連ホームページ:


その他: