詳細 |
講義題目: 知の生態学的転回 授業の目標・概要: 環境問題は、現在、全人類的かつ緊急の課題として私たちに立ちはだかっている。私たち人間の特徴は、自分の周辺の環境を自ら改変し、人間化された環境(人間環境)の中に住んでいることである。とくに現代社会ではその傾向が強く、人間存在の基本構造は、「人間環境-内-存在」ということができるだろう。人間環境とは、人工物によって空間的に形象化され、人間関係がそこで展開され、人間関係によって維持され、社会制度がそれを規範的に制御しているところの物理的な環境である。現在の環境問題とは、この人間環境と自然環境との接点で生じている前者による後者への負荷であり、その破壊的効果のことである。本講義で追求したいのは、集団的に形成された人間環境のあり方を記述し、人間個々人がその人間環境とどのような関係性をとり結んでいるかを明らかにし、最終的に、どのような人間環境を構築・再構築すべきかという規範的な問題を探求することである。これを、ジェームズ・ギブソンを先駆とする生態心理学と現象学を融合させた生態現象学の立場から追求する。
授業のキーワード: [日本語用] 生態学的心理学、ジェームズ・J・ギブソン、アフォーダンス、現象学、身体、技術、倫理
[外国語用]
授業計画: 1.イントロダクション:授業の目的と方法 2.ギブソンの心理学、その認識論と存在論 3.ギブソンの生態学的心理学の基礎と発展:第1巻佐々木、三嶋、野中、工藤論文 4.生態心理学の哲学的基盤:第1巻伊藤、染谷、宮原、池上論文 5.発達にかんする生態学的アプローチ:第1巻丸山、山崎、青山論文 6.環境内存在と技術:第2巻村田、直江、長滝論文 7.環境と居住:第2巻吉澤、伊藤、関論文 8.看護と障害への生態学的アプローチ:第2巻熊谷、野村、谷津、川内論文 9.生態学的コミュニケーション:第3巻岡田、佐古、本多、森論文 10.人間のアフォーダンス:第3巻川原、綾屋論文 11.社会的アフォーダンス:第3巻柏端、萱野、石黒論文 12.生態学的倫理学(1):第3巻河野、柳澤論文 13.生態学的倫理学(2):原則なき倫理は可能か 14.当事者研究と環境のデザイン 15.まとめ
授業の方法: 演習形式の授業をします。テキストを事前に読んできてもらい、ディスカッションで進み、教師の側からの一方的な講義はしません。
成績評価方法: 期末レポート50%、授業内提出物(リアクションペイパーなど)25%、ディスカッションへの参加25%とします。
教科書: 村田純一・佐々木正人・河野哲也・染谷昌義『知の生態学的転回』全3巻, 1身体, 2技術, 3倫理, 東京大学出版会, 2013年.
参考書: 石原孝二編『当事者研究の研究』 医学書院, 2013年. 桑子敏雄『生命と風景の哲学』 岩波書店, 2013年. 河野哲也『エコロジカルな心の哲学: ギブソンの実在論より』 勁草書房, 2003年. 河野哲也『環境に拡がる心: 生態学的哲学の展開』 勁草書房, 2005年. 河野哲也『エコロジカル・セルフ: 身体とアフォーダンス』 ナカニシヤ書店, 2011年. 河野哲也『意識は実在しない: 心・知覚・自由』 講談社メチエ, 2011年.
履修上の注意: ディスカッション中心の集中講義であるために、事前のテキストの講読が必要とされる。
関連ホームページ:
その他:
|