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講義題目: 知覚の哲学
授業の目標・概要: 目標 知覚経験にまつわる哲学的問題と、それへの回答を試みるさまざまな哲学的立場を理解する。また、こうした理解を通じて哲学的に思考するレッスンを行なう。
概要 見たり、聞いたり、触ったりして自らの周囲の事実を知る経験は知覚と呼ばれる。私たちは知覚をとおして、周囲の事実を知り、その場に相応しい行動を作り出し、日々の生活を営んでいる。私たち以外の動物も同様である。しかし、この当たり前のことには、古来から悩ましい哲学的問題がついてまわった。 ・私たちはホントウに周囲の事実を見ているのだろうか?私たちが見て経験しているのは、私たち人間の解剖学的・生理学的条件に制約された人間的な見え世界でしかないのではないか?世界のホントウの姿を私たちは知覚していないのではないか? ・眼や耳や鼻や皮膚といった感覚器官で受容されるのは物理的刺激であるのに、私たちはそれを色や音や匂いや痛みやクスグッタサとして感じる。刺激から感じられた質への転換はどうやって成し遂げられるのだろうか? ・知覚と幻覚や錯覚との違いは何なのだろうか?私たちが幻覚や錯覚ではなく、まさに知覚しているということを何が保証するのだろうか? 授業では、こうした問題を整理し、問題へのさまざまな回答とその哲学的立場を眺めながら、哲学的に思考するレッスンを行なう。問題そのものの妥当性にまで遡りながら考えていく。
授業のキーワード: [日本語用] 知覚、感覚、センスデータ説、副詞説、表象説、選言説、知覚錯誤、錯覚論法、間接知覚説、直接知覚説、志向性、因果性、経験の現象的側面(クオリア)、経験の認識的側面、経験的知識の正当化 [外国語用]
授業計画: 最初の3回の授業で、知覚の哲学の概要、基礎概念、歴史、知覚の科学と哲学の異動、について講義する。その後、以下のテーマについて1〜2回分を割り当て講義する。 1.センスデータ説 2.副詞説 3.表象説・志向説 4.選言説 5.異端説① アリストテレスの知覚論 6.異端説② 生態学的知覚論 7.異端説③ イナクティヴィズム(感覚運動随伴説)
授業の方法: 講義形式を基本とするが、演習と議論を交える。演習の際には担当者を決め、調査と報告を割り当てる。また講義内容の理解を確認しながら適宜、質疑と議論を行う。『入門』とタイトルのついた教科書を用いるが、実際には中級から上級向けであるため、理解しづらい部分は進度を遅くして丁寧な解説を心がける。
成績評価方法: 議論参加度40%、期末レポート60%
教科書: ウィリアム・フィッシュ『知覚の哲学入門』、山田圭一監訳、源河亨・國預佳樹・新川拓哉訳、勁草書房、2014年、3,000円
参考書: Fish, W. 2010. Philosophy of Perception: A Contemporary Introduction, NY. Routledge. (上記教科書の原著) Fish, W. 2009. Perception, Hallucination, and Illusion, NY. Oxford University Press. その他適宜授業内で紹介する。
履修上の注意: 期末レポートを提出して単位を取得するためには3分の2以上の出席を条件とする。
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その他: 質疑を歓迎する。 |