東京大学科学史・科学哲学研究室 東京大学科学史・科学哲学研究室
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3,4年生の方へ

講義名 科学哲学特論 I
年度 2005
区分 冬学期:通常講義
担当 石黒 ひで
教室 1233
詳細

形而上学
哲学が対象とするものには自然科学や社会科学の分類と通じる物もあるが、「実体」や「本質」等のように、哲学固有のものもある。紀元前4世紀アリストテレスがこれらを論じ「第一哲学」と読んだ著作を物理の著作の後に書いた為、それはメタフュジカ(物理の後の)と呼ばれた。誤解されて、哲学固有の超越的な概念の研究分野と見なされる様になり、現在でも欧米哲学の中心分野である。一方、アリストテレスが生きた1世紀以前起こった仏教には、起源後1世紀になって、実在や本質を否定する、空の思想が竜樹に依って説かれ、大乗仏教と言う思想的立場となった。双方の影響を深く受けた日本という文化圏で哲学的思索をする者は、これらを真剣に考える必要がある。勿論此の対立は東西の問題ではない。伝統的なインド哲学のみならず、小乗仏教でも実体を説くし、形而上学を否定する実証主義者も懐疑論者も昔も今も西洋にいる。我々は実体を架空だと説く竜樹や生物の統一性の理解の為に実体概念が要るとするライプニッツ等を読み、真剣に考えたい。