テーマ : 感情とは何か ―― アリストテレスからフロイトまで
「この救いようのない寂しさこそが、幸せの始まり」(シェイクスピア『アントニーとクレオパトラ』)。「人は良心によって悪をするときほど、十全にまた愉快にそれをすることはない」(パスカル『パンセ』)。「愛の対象はおもちゃである。神聖なるおもちゃである。・・藤尾は男をもてあそぶ。一毫も男からもてあそばるる事を許さぬ」(漱石『虞美人草』)。「<これもやはり、愛>と君はいっていた。そしていっそう理由もなしにこうも付け加えた、<一切か、無か>と」(ブルトン『ナジャ』)
感情は、人間の心の様態の中でもっとも不思議なものである。ルソーが「幸福の評価は、理性よりもむしろ感情にかかわる」(『エミール』) と述べたように、あらゆるものが我々にとって、快/不快、好き/嫌い、愛/憎しみなどの相のもとに現れる。悲しみ、怒り、笑いなどは、自分の自由意志で自分に引き起こすことはできない。我々がどこまでも「受動的passive」であるのが「情念passion」なのである。またフロイトは「リビドーを他者に充当する能力と知性は比例する」と述べた(『精神分析入門』)。
授業では、アリストテレス、デカルト、スピノザからフロイトまで、西洋哲学における感情論の鉱脈を探りたい。
哲学は「ゼロから思考を立ち上げる」ので、予備知識は不要。授業は、プリントを配布して講義形式で行う。感情について考えさせる映画も一つくらいは見たい。
参考文献は、アリストテレス『ニコマコス倫理学』、デカルト『情念論』、スピノザ『エチカ』、フロイト『精神分析入門』など。
成績評価は、出席とレポートによる。 |