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3,4年生の方へ

講義名 科学哲学特論V
年度 2011
区分 冬学期:通常講義
担当 松本 俊吉
詳細

講義題目:           進化論と哲学

授業の目標・概要:
この講義では、進化論をめぐる概念的な問題群の考察を通じ、生物学上の問題や論争の分析に科学哲学的思考がいかに貢献しうるかを考えていく。生物学、特に進化論の問題の多くは、第一義的には経験的なアプローチを必要とするものである。しかし同時に、それらの中には、単に実証的な知見やデータの蓄積のみによっては決着のつかない、優れて概念的・哲学的な分析を必要とするものも多い。また、これまで生物学の歴史を活気づけてきた重要な論争の中には、〈対象レベル〉における実質的な主張の対立に起因するというよりも、論争の当事者たちが拠って立っている前提や自然観という〈メタレベル〉における立場の不一致に由来するものも多々ある。科学哲学的思考は、こうした問題に最終的な解決をもたらすものではないが、問題や論争の前提を冷静かつ批判的な吟味によってあぶり出すことによって、混迷する議論の〈解剖学〉となることが期待される。

授業情報:
授業のキーワード:    
進化論、生物学の哲学、自然選択、利己的遺伝子、人間行動、倫理

授業計画:
取り上げる題材としては、現在のところ以下のようなものを考えている。ただしこれらを全部扱えるかどうかはわからない。
*進化論的説明とは何か
*個別科学としての生物学の特異性、その物理学との関係
*適応主義論争
*自然選択の単位の問題
*人間行動・心理・文化の進化論的説明
*進化論と倫理
*進化論と創造論

授業の方法:
初回は授業全体の趣旨や方法についてのガイダンスとする。授業は講義を主体としつつも、随時発言を求めたりディスカッションを取り入れたりする予定。当然生物学的上の話題にいろいろ触れることになるが、参加者がそうした知識を有していることを前提としないような授業進行に努める。

成績評価方法:
参加者には最終的に、各自興味を持ったテーマでレポートを作成してもらう。成績評価の大まかな目安としては、出席20%、発言やディスカッションへの参加貢献度30%、最終レポート50%

教科書:    使用しない

参考書
●E. Sober, Philosophy of Biology, Westview, 1993 (2nd ed., 2000)[邦訳:E.ソーバー著、松本・網谷・森元訳『進化論の射程』春秋社、2009年]
●松本俊吉編著『進化論はなぜ哲学の問題になるのか』勁草書房、2010年
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