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3,4年生の方へ

講義名 応用倫理学特論
年度 2013
区分 冬学期:通常講義
担当 鈴木宗徳
教室 5号館515教室
詳細

講義題目: 


授業の目標・概要:  
80年代以降の社会学において大きな潮流となった「リスク社会論」(再帰的近代化論、個人化論、グローバル化論を含む)という理論枠組みを学び、現代日本の社会変動をより深く理解することを目指す。
 1986に出版された、社会学者ウルリッヒ・ベックの主著『危険社会』(リスク社会)は、国際社会学会が選ぶ“Books of the Century”(20世紀の本)において19位にランクされる名著である。チェルノブイリ原発事故の年に出版された同書は、放射能、食料添加物、飲料水の汚染、大気汚染など、知覚できない化学物質による汚染の問題を「リスク」という言葉で分析し、世界的なベストセラーとなった。
 同書は、社会学理論の領域で新しい時代を切り拓く書物であったと言える。それ以前の社会学が「規律」による人間の「束縛」に焦点化していたのに対し、リスク社会学は「不安」と「不確実性」の時代を分析しようという試みであり、ベックはリスク社会に丸裸で投げ出された人々の「不安」に焦点化したのである。

授業のキーワード:  
[日本語用]
リスク、ウルリッヒ・ベック、再帰的近代化、個人化、グローバル化

[外国語用]
risk, Ulrich Beck, reflexive modernization, individualization, globalization,

授業計画:  
 教科書欄に記載している二冊の書物をテキストとし、参加者で講読を行う。後半で用いるテキストは、オーストラリアの社会学者によるリスク社会学の標準的なテキストである。以下、目次に従って見出しを記す。

『危険社会』
1.富の分配と危険の分配の論理について
2.危険社会における政治的知識論
3.階級と階層の彼方
4.わたしはわたし――家族の内と外における男女関係
5.生活情況と生き方のモデル――その個人化、制度化、標準化
6.職業労働の脱標準化――職業教育と仕事の未来
7.科学は真理と啓蒙から遠く離れてしまったか――自己内省化そして科学技術発展への批判
8.政治の枠がとり払われる――危険社会において政治的コントロールと技術―経済的変化とはいかなる関係に立つか

『Risk』
9.Introduction
10.Theorizing risk
11.Risk and culture
12.Risk and reflexive modernization
13.Risk and governmentality
14.Risk and subjectivity
15.Risk and Otherness
16.Risk and pleasure

授業の方法:  
テキストの講読とディスカッションを中心に、必要な範囲で講義を行う。

成績評価方法:  
講読レジュメの内容および議論への参加姿勢(60%)とレポート(40%)による。

教科書: 
ウルリッヒ・ベック『危険社会――新しい近代への道』東廉・伊藤美登里訳、法政大学出版局、1998.
Deborah Lupton, Risk: Key Ideas, Second Edition, To Be Published 26th March 2013, London: Routledge.

参考書: 
鈴木宗徳「労働と思想13 ウルリッヒ・ベック――個人化する社会」、 NPO法人POSSE『POSSE』vol.13、2011年12月.
その他は、授業中に指示する。

履修上の注意: 


関連ホームページ:


その他: