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読書案内

推薦者

藤川 直也

(日本語で読める文献を主に紹介します)

言語哲学を学ぶに際して最初に読む本として、次の3つの入門書をあげておきます。

  • W・ライカン著、荒磯敏文・川口由起子・鈴木生郎・峯島宏次訳、『言語哲学:入門から中級まで』、(2005、勁草書房):20世紀以降の言語哲学の主要な展開について概略がつかめます。最近(2019)英語原著の第三版が出ました。
  • P・ポートナー著、片岡宏仁訳、『意味ってなに?:形式意味論入門』(2015、勁草書房):自然言語の形式意味論の入門書。形式言語を用いた本格的な文献を読む準備として、そもそも形式意味論なるものが何をやろうとしている学問なのかを理解するのに良いと思います。
  • Cappelen, H. and J. Dever, (2019). Bad Language, Oxford: Oxford University Press. :最近の言語哲学の一つの新機軸に(従来の言語哲学ではしばしば等閑視されてきた)実社会における言葉の関わる様々な問題に取り組む「応用言語哲学」とでも呼ぶべきものがあります。本書は応用哲学の格好の入門書です。英語も平易で学部生でも読みやすいです。

入門書を読んで先に進みたいと思ったら、これらの入門書の読書案内、参考文献で挙げられた著作を読み進めるのがよいでしょう。日本語で書かれた言語哲学の専門的著作は少なくないですが、

  • 飯田隆、『言語哲学大全I-IV』、勁草書房

は外せません。中級以上の読み応えのある通史的な解説書としても、それ以上の本格的な研究書としても、とても優れた著作です。言語哲学の特定のトピックについての専門的な議論がどんなものかを知りたい向きは

  • 藤川直也 『名前に何の意味があるのか----固有名の哲学----』、(2014、勁草書房)
  • 和泉悠 『名前と対象----固有名と裸名詞の意味論----』、(2016、勁草書房)

を読み比べると面白いかもしれません。日本語で読める言語哲学の古典としては、以下のものを手始めに読み進めるのがよいと思います。

  • 松阪陽一編訳 『言語哲学重要論文集』(2013、春秋社)。言語哲学の古典的論文を集めた邦訳論文集。主に指示にまつわる20世紀の言語哲学の主要文献を読むことができます。フレーゲの「意義と意味について」、ラッセルの「表示について」という二つの古典中の古典がここで読めます。
  • P・グライス著、清塚邦彦訳『論理と会話』(1998、勁草書房) 現代語用論の生みの親であるグライスの著作。現代語用論の基礎である会話の格率や会話的推意の理論が展開されている「論理と会話」は必読です。
  • J・L・オースティン著、飯野勝己訳 『言語と行為』(2019、講談社学術文庫) 言葉を使って人が行う行為を扱う言語行為論の出発点。
  • S・クリプキ著、八木沢敬訳 『名指しと必然性----様相の形而上学と心身問題----』(1985、産業図書) 固有名の指示と意味を出発点に心身問題にまで切り込む、20世紀言語哲学のターニングポイント。

他にもD・デイヴィドソンやD・ルイスらの重要著作も邦訳で読めます。

[以下、形而上学について追記予定]