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読書案内

推薦者

廣野 喜幸

3,4年生向け

科学論一般について
 

  • 佐々木力『科学論入門』(岩波新書、1996)
    初級者から上級者まで有用な本。必読書のひとつ。
  • 大森荘蔵『知の構築とその呪縛』(ちくま学芸文庫、1994)
    科学史を舞台に、大森哲学が華麗な舞を見せる。ぜひとも堪能してほしい。

 

生物学史の入門書~専門書
 

  • 中村禎里『生物学を創った人々』(みすず書房、2000)
    生物研究に携わった主要な人々の評伝集であり、生物学史の入門にはうってつけであろう。廣野と同世代の者には、本書の旧版(日本放送出版協会、 1974)でhistory and philosophy of biologyのおもしろさを知り、この道に入ったという人も多い。これに興味をもったら、『生物学の歴史』(河出書房新社、1983)や『血液循環の発見― ウイリアム・ハ-ヴイの生涯』(岩波新書、1977)等に読み進むとよいだろう。
     
  • スティーブン・グールド『ダーウィン以来―進化論への招待』(浦本昌紀・寺田鴻訳、ハヤカワ文庫、1995)
    本書に限らず、グールドのエッセイ・シリーズはすべて推したい。エッセイを気楽に読み通すうちに、進化学・生物学、そして進化学史を中心とした生物学史・地質学史の先端研究の様相が頭に染み込んでくるだろう。
     
  • ピ-タ-・ボウラー『進歩の発明』(岡嵜修訳、平凡社、1995)
    <進化論を社会に適用したのが社会進化論であり、優生思想である>といった、生物学史の地道な研究からは到底受け入れられない言説が、いまだに世間にまかりとおっている。そうした言説を解毒するのに非常によいのが本書である。狭い進化学史の枠を越えた、生命に関する科学思想史の良書であろう。
     
  • ジェラルド・ギーソン『パストゥール』(長野敬・太田英彦訳、青土社、2000)
    川喜田愛郎『パストゥ-ル』(岩波新書評伝選、1995)と読み比べると、両書からは、まったく違ったパストゥ-ル像が立ち現れてくるのに驚くであろう。綿密な研究によりパストゥ-ル像を一新したのが本書である。しかし、私にはこれがパストゥール研究の決定版だとは思えない節がある。本書を乗り越えるようなパストゥール研究がなされなければなるまい。


医学史の入門書~専門書
 

  • 川喜田愛郎・佐々木力『数学史と医学史の対話』(中公新書、1992)
    繙くたびに新たな発見がある。具体的な研究を支える科学史家の志を読みとって欲しい。
  • ミシェル・フ-コ-『臨床医学の誕生』(神谷美恵子訳、みすず書房、1971)
    フーコーの哲学的医学史の登場以来、近代医学史・公衆衛生学史は、本書を避けては通れなくなった。読みやすいとは決して言えないが、読了した暁には、医学の歴史がまったく新たな視野のもとに開かれるであろう。
  • 児玉善仁『「病気」の誕生―近代医療の起源』(平凡社、1998)
    フーコー的近代医学史・公衆衛生学史の研究が流行っている。しかし、フーコーの哲学的医学史はあくまで彼の哲学に則ったものでしかない。フーコーの前掲書からのみ近代医学の誕生をイメージするのは好ましくない。本書とフーコーを同時に読むことによって、近代医学の系譜の多様性が認識できるであろう。
  • 川喜田愛郎『近代医学の史的基盤』(岩波書店、1977)
    日本語で書かれた西洋医学史の通史で、本書にまさるものはない。医学史事典としても使えるほどinformativeな書物である。大部なので読みやすいとは決して言えないが、読了した暁には、医学史に対する見識とは何かが分かってくるであろう。


注1)他にも、philosophy of lifeの分野や科学哲学・科学論、科学技術倫理・生命倫理学・環境倫理学の分野で勧めたい書物は多いが、今回は主として生物学史・医学史に限ることにした。他の分野については、次の機会を待つことにしたい。

注2)生物学史・医学史の分野は、必読文献があり、基本書があり、上級者向けの文献があり・・・という具合に整然としているわけではない。上記1や7などをもとに、自分の興味を抱いた分野を多読することが重要である。上記10冊はあくまでも「とっかかり」にすぎないことを強調しておきたい。

なお、中村先生には、他に『生物学と社会』(みすず書房、1970)、『血液循環の発見― ウイリアム・ハ-ヴイの生涯』(岩波新書、1977)、『生物学の歴史』(河出書房新社、1983)『日本のルィセンコ論争』(新版、みすず書房、1997)等がある。中村先生自身は、『危機に立つ科学者―  1960年代の科学者運動』(1976)に愛着があるそうだ。今日手に入りにくくなったものも多いが、いずれも読んだおきたい本である。