東京大学科学史・科学哲学研究室 東京大学科学史・科学哲学研究室
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読書案内

推薦者

村田 純一

3,4年生向け

A. 一般的文献:哲学一般への入門

最初の3冊は、西洋哲学の基本中の基本文献であり、多くの人は既に読んだことがあるとは思うが、念には念を入れるためにあげた。科学哲学、科学論、といった範囲に限らず、哲学一般の基礎となる文献。
残りの3冊は、日本人の書いた哲学書で、お勧めのもの。
 

  • プラトン『パイドン』(『世界の名著』6「プラトンⅠ」中央公論社、新潮文庫)
    西洋哲学の源流、プラトン哲学の白眉。心身問題の古典中の古典。
     
  • デカルト『省察』(『世界の名著』22「デカルト」中央公論社)
    近代哲学の源流。方法的懐疑、心身二元論と心身の融合など、認識論と存在論の根本問題。
     
  • カント『学問として現れるであろうすべての将来の形而上学への・・プロレゴメナ』
    『純粋理性批判』を通読できればそれにこしたことはないが、なかなか難しいので、読みやすい本書だけでも読んでおいてほしい。近代認識論、学問論の基本。
     
  • 三木清『哲学入門』(岩波新書)
    哲学の基本概念の明快な解説。西田哲学、プラグマティズムへの入門書でもある。
     
  • 大森荘蔵『物と心』(東京大学出版会)
    自分で問題を考え、明晰に書くとはどういうことかを学ぶには、持って来いの書物。
     
  • 廣松渉『身心問題』(青土社)
    廣松の主著には『存在と意味』、そして若き著作には『世界の共同主観的存在構造』があるが、廣松哲学にはなじみのない人にも読みやすいものとして選んだ。


B. 科学哲学の基本文献

書物としてあげたいものもあるが、ここでは、論文に限った。そのため、数が多くなってしまった。ほとんどはいわゆる分析哲学系の流れに属するものである。それぞれ、単なる解説論文ではなく、科学哲学のオリジナルな文献であるので、じっくり味わってもらいたい。(以前、何回かここにあげたリストにあげた論文を選んで内定した学生をターゲットにした「科学哲学(の基礎)演習」の授業を行ったことがある。わたしの印象では、わりにうまくいったように思うので、このリストに利用した。)

1から5はいわゆる「論理実証主義」に属する基本文献。6から10までは「批判的合理主義」と呼ばれる流れに属するもの。あとはクーンの「科学革命論」、クワインの有名な論文、そして、科学社会学に属する論文など、さまざまな流れのものを選んだ。

  1. モーリッツ・シュリック「事実的ア・プリオリは存在するか」(『現代哲学基本論文集Ⅰ』(坂本百大編)勁草書房)
  2. ルドルフ・カルナップ「言語の論理分析による形而上学の克服」(『カルナップ哲学論集』(永井成男他)紀伊國屋書店)
  3. ルドルフ・カルナップ「科学の統一の論理的基礎づけ」(前掲書)
  4. オットー・ノイラート「プロトコル言明」(前掲書)
  5. カール・G・ヘンペル「意味の経験論的基準における問題と変遷」(『現代哲学基本論文集Ⅰ』前掲)
  6. カール・R・ポパー「科学-推測と反駁」(カール・R・ポパー『推測と反駁』 (藤本隆志他訳)法政大学出版局)
  7. カール・R・ポパー「知識に関する三つの見解」(前掲書)
  8. カール・R・ポパー「論理学、物理学、および歴史についての一実在論者の見解」(カール・ポパー『客観的知識』(森博訳)木鐸社)
  9. イムレ・ラカトシュ「科学史とその合理的再構成」(イムレ・ラカトシュ『方法の擁護』(村上陽一郎他訳)新曜社)
  10. イムレ・ラカトシュ「コペルニクスの研究プログラムはなぜプトレマイオスの研究プログラムよりすぐれていたのか」(前掲書)
  11. トーマス・クーン「パラダイム再論」(『現代思想』1985年7月号、vol. 13-8)
  12. トーマス・クーン「思考実験の機能」(トーマス・クーン、『本質的緊張』、安孫 子誠也、佐野正博訳、みすず、1992)
  13. トーマス・クーン、「客観性、価値判断、理論選択」(同上書、13章)
  14. ウィラード・ヴァン・クワイン、「経験主義のふたつのドグマ」(クワイン『論理的観点から』、飯田隆訳、勁草書房)
  15. ウィラード・ヴァン・クワイン、「自然化された認識論」(『現代思想』1988年7月号、vol16-8)
  16. ドナルド・デイヴィドソン、「概念枠という考えそのものについて」(ドナルド・デイヴィドソン、『真理と解釈』、野本和幸他訳、勁草書房)
  17. ドナルド・デイヴィドソン、「根元的解釈」(前掲書)
  18. バリー・バーンズ/デイヴィド・ブルーア、「相対主義・合理主義・知識社会学」(『現代思想』1985年7月号)
  19. イーアン・ハッキング、「実験活動と科学的実在論」(イーアン・ハッキング、 『表現と介入』、渡辺博訳、産業図書)
  20. ゲルノート・ベーメ他、「科学の目的内在化」(『現代思想』前掲)
  21. マイケル・ポラーニ、「知と存在」(マイケル・ポラーニ、『知と存在』、佐野安仁他訳、晃洋書房)
  22. ハンス・アルバート、「基礎づけの問題」(ハンス・アルバート、『批判的理性論考』、荻原能久訳、御茶の水書房)
  23. ユルゲン・ハーバーマス、「認識と関心」(ユルゲン・ハーバーマス、『イデオロギーとしての技術と科学』、長谷川宏訳、紀伊國屋書店)
  24. カール・オットー・アーペル、「科学の論理・解釈学・イデオロギー批判」(カール・オットー・アーペル、『哲学の変換』、磯江景孜他訳、二玄社)
  25. ヒラリー・パットナム、「なぜ出来合いの世界は存在しないのか」(ヒラリー・パットナム、『実在論と理性』、飯田隆他訳、勁草書房、1992)
  26. ヒラリー・パットナム、「なぜ理性は自然化できないのか」(前掲書)
  27. トマス・ネーゲル、「大脳分離と意識の統一」(トマス・ネーゲル、『コウモリであるとはいかなることか』、永井均訳、勁草書房、1989)
  28. リチャード・ローティ「連帯としての科学」(リチャード・ローティ『連帯と自由の哲学』、富田恭彦訳、岩波書店、1988)